資産運用の基本その1:長期保有のメリット

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資産運用について

資産運用でやってはいけないこととは?」で、資産運用でやってはいけないことを書いてきました。また「資産運用のイメージ、間違ってませんか?」では、金融資産を労働力として活用し、しっかり稼いでもらうという発想を持つことについて書きました。これらを踏まえて、資産運用の基本について考えを書いていきます。また退職金を資産運用するというステージにいる方にとっての注意点も併せて考えていきます。

資産運用は長期保有が基本。

自分が保有する金融資産を労働力として考えた時に、最も効率が良いのは長期的に安定して稼ぐことができる投資先に労働力を配分することです。この理由は2つあります。

  • 投資先としてのパフォーマンスを想定する際に、過去の長期トレンドを当てにできる。
  • 売買するたびに必要な手数料の負担を回避できる。

投資先としてのパフォーマンスを想定する際に、過去の長期トレンドを当てにできる。

様々な投資先に共通して言えることは、短期的な値動きは予測があまり当たらない、ということです。チャート分析という手法で短期の値動きを予想し、値上がり益を追求する投資家はいますが、継続的に当てるというのは難しいものです。短期的な値上がり益を追求すればするほど、外れる確率も上がり、運用効率は悪くなります。

これから資産運用を始めようという投資初心者の方なら尚更です。サイコロの目を当て続けるようなもので、余程の運に恵まれた人にしかおススメできません。

短期運用に対し、長期保有ですと過去の値動きから今後のパフォーマンスを期待できます。
ただし、残念ながらそれは「期待にすぎない」ということは付け加えておく必要があると思っています。長期投資なら確実に稼ぐことができる、というのは、過去のトレンドから見ると確かなように見えますが、これから先も必ずそうなると保証されているものではありません。

「下がる可能性を受け入れることによって利回りを得る」というのが投資の本質だというのは、短期でも長期でも同じです。資産を労働力と考えた時に、その労働の源は「リスクの受け入れ」であり、対価は「(受け入れたリスクに見合う)期待値」です。そして、長期保有すればするほど、リスクを受け入れる期間が長くなることにより、期待値も大きくなっていきます。

普通預金のように元本割れしない資産は、資金を必要としている借り手の需要に対する資金供給の対価として金利を受け取るのですが、この対価は現状ほぼゼロで据え置かれています。資金供給という行為そのものは、もはや労働と認めてもらえていない状況です。「貸したら返ってこないかもしれないという不安」「出資したら価値が下がってしまうかもしれないという不安」があるからこそ、そのリスクに見合う対価を「期待値」として獲得できるのです。長期保有の有用性は、この期待値という対価を継続的に得ることだと考えています。

売買するたびに必要な手数料の負担を回避できる。

長期保有の有用性については、実はこちらの側面の方が大きいと思います。
資産運用の最大の敵は、手数料の負担です。このように書くと、「いやいや、最大の敵は投資先の価格の暴落でしょう!」と反論されそうです。けれども資産運用という観点では、決してそうではありません。

資産運用の稼ぎの正体は期待値の部分であって、元本部分が増減することは想定内と割り切ることが肝要です。そして、元本部分は時に暴落や暴騰を繰り返しながら増減していきます。
企業の利益は将来の利益獲得の源泉となっていきますので、経済活動が順調に拡大していく世界においては利益が次の利益を生み、従って元本部分は緩やかに拡大していくだろう、と考えることはできます。つまり、それくらいの気持ちでおおらかに構えていれば精神的に安定します。そしてその間の期待値を着実に獲得していくわけです。

そうなると、手数料の負担はマイナス要素でしかありません。マイナス要素でしかないということは、上がったり下がったりを繰り返す元本部分よりも悪質なのです。元本部分は下がってもいつか上がる可能性があります。けれども手数料はいつまでたっても絶対に返してもらえることはありません。
期待値の水準は高リスクのものでおよそ7%程度のようですので、そこから1%の手数料を失うことは大きな損失です。
手数料は売買するたびにかかります。下がったから損切りと称して売る、上がったから利益確定と称して売る、そしてまた買い直す、これらを繰り返していては、まるで手数料を納めるために投資しているようなものです。

さらに利益確定の売りには課税によるコストの負担もあります。資金が必要になるといつかは必ず売ることになりますが、それでも課税負担はできるかぎり先送りにすることが重要です。資産運用においてはコストをできるかぎり削減し、先送りすることは鉄則なのです。

退職金運用者の弱点と対策。

長期保有に関しての退職者の資産運用における弱点は、若いうちから少しずつ積み立てるという基本戦略がもはや取れないことです。どう頑張っても時間を戻すことはできません。今になって、若いころから少しずつでも積立投資をしておけばよかった、と後悔するばかりです。Mr.老眼も同じ思いをしています。長い年月をかけてギャンブル的な株式投資しかしてこなかったことは大いに後悔しています。

退職金という大きな労働力を手にしたときに、ではどうするか。ここから月1万円ずつ積み立てを、などと悠長なことを言っている余裕はありません。

ただし、慌てて一度に全額を投資するのは待ってください。まだ人生30年くらい残っていると考えて今後の資産運用を実践していくときに、投資先をしっかり吟味し、値動きを見ながら複数に分けて投資していくには、半年から1年くらいかける気持ちを持っている方が良いです。

それだけ時間をかければ、様々な投資先の特徴を理解し、様々な専門家の見方を学び、自分なりに運用の方向性を見出せるようになってきます。また半年たてば市場環境も変わってきます。世の中のイベントが値動きにどう影響するのかといったことを学ぶのは時間がかかりますし、そういった資産運用の世界に不慣れな方にとっては、そのようなニュースやトピックスの数々と、それに伴う値動きの変化に頭を慣らしていくことが最初は大切です。

それと、少しずつ資産運用をスタートすれば、投資先の価格が下がってしまったときの気持ちのダメージを最小限にできます。これは投資を始めたばかりの方には意外に大事です。初っ端から気持ちが折れてしまっては、投資そのもののやる気を失ってしまいます。
慌てず、けれどもちょっと急ぎ足で勉強していきましょう。そして実践は少しずつ、です。

長期保有に関しての退職者の資産運用における弱点はもう一つあります。
収入がない(あるにしても足りない)ので、運用資産を期間に応じて生活費として取り崩していく必要があり、全額を長期運用できるわけではないことです。

まず考えておかなければいけないのは、当面の生活費は投資に使わず普通預金に残しておくことです。少なくとも1年間の生活費は投資に使わずに必要資金として残すのが良いと思います。資産運用に不慣れな方は投資先選定にも時間をかけた方が良いですし、急いで投資して値下がりしてしまった資産を生活費として取り崩すのは精神的なダメージも大きくなります。

退職金の資産運用をこれから始める方、また今始めつつある方には、必要資金を別枠で残しておくという考え方をしっかりと身に着けていただきたいと思います。

まとめ

資産運用の基本その1として、まずは長期保有の有用性と退職金運用に関する長期保有の注意点について書いてきました。投資先の値動きに慌てて反応しないこと、短期売買を繰り返すのは手数料が増えるばかりで運用にはマイナスでしかないこと、これらはしっかりと頭に入れておきましょう。

投資初心者でなくても、投資先の価格が暴落すると不安になります。そして価格が上がると嬉しくなります。不思議なことに、上がった時の嬉しさよりも下がった時の不安の方が遥かに大きいものです。けれども、この不安を受け入れることで期待値を獲得するのが資産運用というものなのです。

最初は「下がっても頑張って耐えられる金額」から始め、長期保有という考え方に徐々に慣れていくのが良いと思います。Mr.老眼も日々学び、実践していきます。